(千葉・外房)

菅沼建築設計

 

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Q:建築家は自分が設計した家に不具合があっても責任をとらない(補修費用を払わない)と聞きました。それで済むということは不具合の多くは設計に問題がなくて施工不良が原因なのでしょうか。

菅沼:建築士の法的責任は何か、という話として考察します。

 

法律の中に「建築家」という名称が出てくることはありません。

法的責任を問われるのは、国家試験に合格して法律行為を許されている「建築士」です。

「建築家」と世間的に呼ばれる人の中には建築士でない人もいますから、その場合は仕事の法的な部分をサポートしている別の建築士の法的責任となります。

 

ここでいう「家の不具合」が具体的に何かは分かりませんが、「補修費を払わない」という部分から、「損害賠償責任を負うべきではないかと疑われる不具合」と推察されます。

 

建築士の法的責任には契約責任と不法行為責任があります。

 

建築主が建築士と結ぶ契約において契約責任は生じます

まず、建築主と建築士はどのような契約を結んでいるかを理解しなくてはなりません。

 

契約には「契約自由の原則」という大前提があります。

これは建築主と建築士はどのような契約を結ぼうと自由であり、契約の内容を自由に決めることが出来る、ということを指します。

 

契約は当事者間の口頭での意思確認だけでも成立することはよく知られています。

契約においては、任意規定を設けて内容を定めます。

任意規定とは、当事者間で合意して定めた内容で、民法などで定められているものとは異なった内容であっても、その内容を優先する規定です。

任意規定に対して、強行規定という法律が存在します。この強行規定は、たとえば「住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品確法)」で定めている構造と雨漏りに関しての10年間の瑕疵担保責任などが相当します。仮に任意規定でこの期間を3年間と定めても、それは無効となります。

契約で問題箇所が不明瞭な場合は、慣習により契約内容を解釈することが民法第92条で定められています。


建築主と建築士が結ぶ契約では以下の3つの形態が考えられます。

  • 設計契約(設計だけを依頼する)
  • 工事監理契約(工事監理だけを依頼する)
  • 設計・工事監理契約(設計と工事監理を依頼する)

この契約が「委任契約」(業務の遂行を相手の自由な意思に委ね、報酬の授受は出来高に従う)に当たるのか、「請負契約」(業務の完成が報酬授受の条件)に当たるのか、これは現在でも解釈が分かれている法的問題となっています。

四会連合協定(日本建築士会連合会・日本建築士事務所協会連合会・日本建築家協会・建築業協会)が出している「建築設計・監理業務委託契約約款」では委任的な内容となっています。この契約だと、設計の進行に伴って契約が履行されていくということになり、何らかの理由(正当性が必要)で途中解約となった場合の報酬は、そこまでの出来高に従って支払われることになります。

工務店が建築主と通常結ぶ工事の契約は請負契約です。建物の完成をもって契約の履行となるため、基本的には竣工まで報酬が無いことになります。実際は任意規定によっておおよその出来高に従うという支払い条件が付加されているはずです。

 

設計・管理契約を委任と考えた場合、損害賠償につながるのは過失です。

「善良なる管理者の注意義務」をもともと負っている債務者はこの過失責任から免れられることはまずありません。

この契約を請負と考え場合、過失の有無に関係なく、完了できないこと(満足な結果を残せていないこと)に対しての債務不履行の損害賠償が生じます。

事実上、どちらの解釈でも損害賠償という面で見れば同等の効力があるとみなされているようです。

 

建築士の責任は契約に従って、「設計」又は「工事監理」のどちらか、あるいはその両方にあります。

不具合の原因は何なのか?

問題は、設計ミスによって不具合が生じたのか、工事監理のミスによって不具合が生じたのか、施工の精度が原因で不具合が生じたのか、ということにあります。

 

工務店が建築主から建築一式工事を請け負う場合によく使われる「民間工事請負契約約款」は日本建築学会・日本建築協会・日本建築家協会・全国建設業協会・日本建設業連合会・日本建築士連合会・日本建築士事務所協会連合会の7団体が策定したものです。

この約款では工務店側が発見した「設計の疑義」について第16条(1)に次のような記載があります。

「請負者は、次の各号の一にあたることを発見したときには、直ちに書面をもって監理者に通知する。

a:図面・仕様書の表示が明確でないこと、図面と仕様書とが一致しないこと、または図面・仕様書に誤謬あるいは脱漏があること。

b:(以下省略)」

 

また、続く第17条では「図面・仕様書に適合しない施工」について、同条(5)に以下のような記述があります。

「本条(4)のとき(注:監理者の指示によって図面・仕様書に適合しない施工をおこなった場合は請負者はその責を負わない、という趣旨)であっても、施工について請負者の故意あるいは重大な過失によるとき、または請負者がその適当でないことを知りながらあらかじめ監理者に通知しなかったときは、請負者はその責を免れない。ただし、請負者がその適当でないことを通知したにもかかわらず、監理者が適切な指示をしなかったときはこの限りでない。」

 

つまり、設計ミスを工務店が見つけた場合は、それを設計者・監理者に通知しなければ施工者の責任になるということです。

設計ミス・監理ミスを施工者も発見できずにそのまま施工した場合、そこで生じた不具合は、内容により施工者の責任か、設計者・監理者の責任か、判断が分かれるでしょう。

 

たとえば単純な屋根形状なのに屋根から雨漏りが発生した場合は、普通は施工者側のミスでしょう。

複雑な屋根形状で防水が難しい場合、施工者は難しい立場に立たされます。可能な限り防水に配慮した施工とするべく設計者・監理者と協議して万全を期すべきです。

それでも雨が漏ってしまった場合は、協議を行って施工している以上やはり施工者の責任となってしまうでしょう。

 

実際にある設計ミス・監理ミスの責任が問われるケースは、住人の生命が危険にさらされるような重大なものに限られるようです(判決を例に取ると、「バルコニーの手摺りがぐらつく」といった程度では基本的な安全性が欠けているとまではいえない、とされています)。

それにしても、行政による建築確認が行われていて、中間検査を行い、工事完了報告書を提出して検査済み証を受け取る訳ですから、一体誰がどのような責任を負うのか、不明瞭といわざるを得ません。

 

不法行為責任については、契約を結ぶ当事者以外の、第3者から被害を主張されるケース、たとえば建物を転売したときに買主が設計者の過失を発見したときなどに問題になります。通常、契約当事者間では不法行為責任よりも契約責任が問われることになります。

 

この問題ではうかつな事は言えないので冗長な回答になってしまいました。

結論は、

  • 工務店は自分を守るために設計者に出来る限りの質問をする。
  • 建築士事務所は重大な瑕疵に備えて、建築士事務所向けの損害賠償責任保険(補償対象は限定的)への加入を考える。

といったところです。

改めて、きわめて難しい問題であることに気付かされます。

2014.11.30