エスクローサービスについて

建設資金を銀行から借りる場合、住宅の所有権保存登記をもって融資の実行になるのが原則である。これは住宅金融支援機構の場合も同じだ。抵当権の設定と融資の実行が同時でなければならないのは当然と考えるべきだろう。

これが現実に可能なら品物と現金の同時交換となるが、実際には2000万円前後の建設資金を私個人が立て替えることは残念ながら不可能である。協力業者への支払いを建物引き渡しまで待ってもらうことも不可能である。

 

今までにこの問題をどうやってクリアしてきたか、実際にあったことを振り返ってみる。

 

(1)金融機関が現場の出来高に合わせて、工事請負契約書通りの融資を実行した。

(2)施主が「つなぎ融資」を受けて、工事請負契約書通りの支払いをした。

(3)当事務所が運転資金の融資を受けて、建て替えをした。

(4)エスクローサービスを利用した。

 

(1)は抵当権設定前の融資なのだから、原則から外れている。これを行う金融機関は限られているだろう。実際には施主の口座を素通りして当事務所の口座に資金が入ってくる。

(2)は施主の名前で当事務所への実質的な融資が行われている状態とも言える。現実には最も一般的な方法と思われる。建設資金は全て施主が準備するという姿勢である。

(3)は施主へ融資する銀行で当事務所の口座を開いて、最終的には当事務所へ融資された運転資金を施主の住宅ローンで埋め合わせることになる。実際の工事請負契約では(2)と同じように建設資金を全て施主が準備するという立場で書かれており、出来高払いではなく工事前に代金の授受が行われる内容が一般的である。その場合、施主に代わって運転資金融資を受ける施工側の諸経費は施主が負担すことになるだろう。

(4)は施主と施工者とで最も公平なリスク分配がなされる。

 

おそらく(4)が最も良い方法なのだろうという実感がある。

施主は「出来高払い」という安全な道を進むことができる。

施工者は施主の不払いというリスクを回避できる。

事務手数料を支払うことでお互いが最も不安に感じる要素を排除できる方法なのだ。

 

私達が活動している千葉県では千葉銀行が「職人技」という住宅ローンを行っている。

これは(株)ERIソリューションが行うエスクローサービス「すまいとマネープラン」を利用している住宅ローンである。

普通の住宅ローンとの違いは、エスクローサービスの信頼性によって融資が事前に実行されるという点である。(菅沼)