自力建設

       私の家 (菅沼自邸)

私が自分の家を計画したときに考えたことと、
実際に建てた家の様子を紹介します。

 


南側道路に立って正面から家を見たときに、低く深い一文字の軒を構えた家にしたかった。これは私の好みと、周辺の環境から感じたものによる。
間取りは左から、住むところ・車庫・事務所の3つに分けられる。これは古民家のイメージから。
一見すると平屋建てのような感じで、空へ視界が開ける。屋根はガルバリウム鋼板厚さ0.4mmの一文字葺き。最高高さは約5.9mで、一般的な軒高程度である。

 

 

 

北側外壁の様子。渡りあごで掛けている梁の端部が出っ張っている。この部分の防水は防水テープとシーリングによる。本当はこの出っ張りは防水面から考えれば無い方がいいのだが、外壁に変化を付けている。
外壁は杉板の本実加工品厚さ12mm。水性の外部用ステインを塗りながら張った。防火構造への対応は不燃ボード下張りによる。

外壁材の実(さね)は9mm重なっているが、雨がかかり日光に照らされる部分は反りが大きくて何とかはまっている感じである。この問題は施工してみて実感した。

 

 

車庫は北側の道路まで抜けていて、車だけでなく、近所の子供や野良猫やツバメが通り抜けていく。風もよく抜けて、夏は涼しい作業場となる。逆に冬は寒くて、シャッターでもなければ作業には向かない。
今は、タイヤの走る部分にはコンクリート平板を敷き、隙間には防腐剤を染み込ませた角材を敷き詰めている。

 

 

 

軒裏の様子。化粧野地板が見えている。
垂木は35×105で、電気かんなで削った。
南側だけ、軒の出が1365mmあるので、念のため出桁(だしげた)で支え、強風時は下へ引っ張る構造とした。

雨樋を付け、鎖で雨水枡へ落としている。、樋を付けずに下に砂利を敷き詰める方法が考えられたが工事中の泥はねがひどく、早々に雨樋を付けた。

煙突には、ルーフバルコニーから屋根へ出て行ける。薪ストーブに煙突掃除はつきものなので、煙突整備の仕方を考えておかなければならない。



居間の南側は木製建具の引き込みにより、2間分の開口になる。その戸袋で、ガラス戸・網戸・ガラリ雨戸(既成アルミ製)が各2ずつ合計6枚入る。
その他の引き違いアルミサッシの戸袋も、外壁と同じ杉板を張った。

玄関戸は、自分が以前の会社で担当した現場の廃材(フラッシュ戸)の再利用品。縦を詰めて横に足した。握り玉が付いていた穴が今もそのままになっている。



寝室として使っている部屋の様子。置き畳は近所のホームセンターで一枚¥1000で買ったもの。子供の遊びでボロボロになっても惜しげなく交換できる。
建具は、近くにあったアウトレット建材店で格安で置いていたもの。日焼けや角の欠けなどで正式な商品にならなかったものと思われる。気にしなけばこれで十分だ。

 

 

寝室から居間を見る。寝室だけ建具で仕切れ、応接室にもなる。
畳に布団という生活スタイルは、私と妻の共通の生活習慣で、結婚当初から通している。
今もって、この部屋で布団を5枚敷き詰めて6人で雑魚寝をしている。

壁は厚さ12.5mmの石膏ボードの上に和紙を混入したビニールクロスを貼っている。施工は専門工事店に依頼した。自分で紙を貼ったり、左官工事をしたりと考えていたが、時間的に無理だった。 

 

 

居間の南側の全開口の状態。
木製デッキを付けて居間の広がりを更に出そうかなどと考えていたが、庭から直接腰掛けられるこの敷居は、このままでもいいかと思うようになった。

ほとんど玄関代わりになっている。

 

床は厚さ30mmの杉板。柑橘系の匂いのするワックスを塗っている。
杉板が持つ、足の裏に触る柔らかさがいい(と私は思う)。
傷が付きやすいが、気にはならない。
3歳の末娘はこの杉板の上で寝るのが好きなようで、今年の夏はこの床にぺったりと体を付けて昼寝をしていた。

この家の軸組の様子。全て杉を使っている。梁は千葉県の地元産の杉で、柱は紀州産の杉を購入した。実際に材料を見て、そう決めた。
縦通りと横通りはどちらも継ぎ手によって一本につながっている。
それぞれを渡りあごで4寸の高さを違えて組み、柱の天地の長ほぞに込み栓を打ち込み、引っ張りに抵抗する。

 

 

名ばかりの「自然乾燥」状態で刻みに臨んだが、多少割れや曲がりが進行した位で今のところ大きな問題は無い。
耐力壁には基本的には筋違いを使った。筋違いだけは固定するのに金物を使う。それ以外では金物を使わずに主要な軸組が組み上がっている。 

調理台・流しは、ステンレストップだけ工場で作ってもらい、手摺り壁に固定した。下はスカスカで、ゴミ箱などを置いている。妻の手荒れがひどかったためビルトイン式の食器洗い乾燥機を付けた。なんだか贅沢な品物のように思ってきたのだったが、家族が多いと助かる設備ではある。

ステンレストップだけのキッチンの背面に自主製作した引き出し食器棚は、引越し直後には無かった。ダンボールから直接食器を出し入れしていたので、完成した引き出しでそのありがたさを再確認した。

洗面所は、足場板として20枚取った杉板の良いものを2枚はぎ、上に陶器の洗面器を置いた。固定も取り外しも簡単である。

 

 

トイレは、1階は直圧式のものを付けた。2階はタンク式で地下水を使っている。

 





浴室は、壁上部と天井がサワラ板で、下はモルタルのまま。床にスノコを敷く。
浴槽へは地下水を入れて追い焚きする。シャワーは上水道を使う。
洗濯には浴槽の残り湯を使い、足りない分は地下水を使う。

 

 

階段上部から見た居間の様子。この階段最上段のところの梁下の寸法で建物全体の高さが決まっている。屋根勾配は4寸で、これは見た目の感じで決めた。
2階にいても、下の気配は分かり過ぎるほどである。
子供たちがどこにいても、気配が分かる。
子供の本当の気持ちは改めて訊いたことが無いが、親としてはこれで良かったと思っている。
テレビとパソコンを置く周辺の家具をこれから作りたい。 

 

 

階段上部のFIX窓。ルーフバルコニーに面している。ここから朝日が居間へ差し込む。夏は暑いのでロールスクリーンを下ろす。
ルーフバルコニーは、屋根をくり抜き、床に塗布防水を施した。広さは6帖。
ルーフバルコニーに立っている人を外から見ると、屋根から上半身を突き出しているように見える。「屋根のあの穴は何?」と工事中に通行人からよく訊かれた。

 

 

最近作った2段ベッドが二つ。1×4・2×4・2×6・2×8材で組み立て、ステインを施した。ラテックスマットレスをはめ込んだ。
今は6人で雑魚寝しているが、そのうち子供たちはこっちへ移動するだろう。
今のところ、マンガを読む休憩所のような使われ方をしている。


これも最近作った子供スペース。ランバーコアで机を作り、本棚を作り、畳の縁台のようなごろ寝スペースを作った。これも気配が分かるよう、重心の低い配置をして視線が抜けるようにした。
好きなように散らかしてもいいと思っているのだが、 見えるだけにその散らかし具合が気になる。「ちょっとこれじゃ散らかし過ぎだよ!」

 

 

2階から事務所へ降りる階段の本棚。下へ降りると家庭的気配からかなり遠ざかる。生活スペースとは車庫を隔てて、二階でつながっている。

 

 

2階へは階段以外にも、柱を伝って行ける。下るのにも柱が使われる(子供だけ)。

 

 

 

夜、家の中の灯りがつき、中から子供の声やピアノの音や家事の音が聞こえてくる。

しばらく道路から眺めたりする。